【タワマン神話の終わり?】湾岸エリアで始まった“静かな選別”
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湾岸エリアのタワーマンション市場で、少しずつ空気が変わり始めています。
人気物件で一部住戸の予定価格が大きく見直される。引き渡し前のマンションで転売住戸が市場に並ぶ。中古マンションの在庫が増え、売却まで時間がかかる物件も目立ち始める。
こうした話を聞くと、
「ついにタワーマンション価格が暴落するのでは?」
と感じる方もいるかもしれません。
しかし、現時点で湾岸タワーマンション全体が暴落しているわけではありません。
むしろ今起きているのは、
「タワマンなら何を買っても上がる相場」から、「選ばれる物件と選ばれない物件がはっきり分かれる相場」への転換
ではないかと考えています。
今回は、湾岸エリアで起きている変化と、これからマンションを購入する方、売却する方が確認しておきたいポイントについて解説します。
なお、今回取り上げるマンションや湾岸エリア自体に問題があるという話ではありません。個別の物件を否定するのではなく、市場の変化を見るための一つの事例としてご覧ください。
人気タワマンでも価格調整が起きている
まず注目したいのが、港区港南の「リビオタワー品川」です。
総戸数815戸、地上34階建ての大規模タワーマンションで、品川駅港南口から徒歩13分という立地。2026年5月に竣工した注目物件です。
販売開始当初から非常に人気が高く、一部住戸ではかなり高い倍率となりました。
ところが、その後の販売では、一部住戸で予定価格の大幅な見直しが行われています。
例えば、15階・約71㎡の住戸では、前回販売期に2億2,900万円台とされていた予定価格が、その後1億9,600万円へ変更。
約3,300万円の価格調整です。
16階の同タイプも、2億3,000万円台から1億9,800万円へ変更されています。
ただし、ここで注意したいのは、すでに契約した住戸を3,000万円以上値下げしたわけではないという点です。
あくまで予定価格を、その後の販売状況などを踏まえて修正したものです。
そのため、
「リビオタワー品川の価格が崩壊した」
「タワマンバブルが弾けた」
と判断するのは早いでしょう。
それでも重要なのは、人気エリアの新築タワーマンションであっても、価格を高く設定すれば簡単には売れない状況が出始めていることです。
これまでのような、
「人気物件だから、もっと高くしても売れる」
という強気一辺倒の値付けが、通用しにくくなっている可能性があります。
豊海タワーでは転売住戸との競合にも注目
もう一つ注目されているのが、中央区豊海町の「ザ 豊海タワー マリン&スカイ」です。
総戸数2,046戸。勝どき駅から徒歩10分の場所に建設される、湾岸エリアでも最大級のタワーマンションです。
このマンションには、販売価格と周辺相場との価格差に注目し、実際に住むための購入者だけでなく、転売や投資を目的とする購入希望者も多く集まりました。
実際、引き渡し前の段階から、約61㎡の2LDKが1億5,000万円を超える価格で売り出された事例もあります。
ただし、ここでも注意したいのが、
「売出価格=市場価格ではない」
ということです。
売主が「この価格で売りたい」と考えている金額と、実際に買主が購入する成約価格は別物です。
今後、引き渡しが近づいて転売住戸が増えてくると、同じマンションの中で似たような住戸が複数売りに出される可能性があります。
そうなると買主は、階数、眺望、方角、間取り、引き渡し時期、価格などを細かく比較できるようになります。
つまり、同じタワーマンションでも、
「どの部屋を持っているか」
によって資産価値に差が出やすくなります。
「同じマンションだから、全部同じように値上がりする」という考え方は、今後ますます通用しにくくなるでしょう。
2026年5月、首都圏中古マンション市場に変化
では、首都圏の中古マンション市場全体はどうなのでしょうか。
2026年5月の東日本不動産流通機構、いわゆるレインズのデータでは、首都圏中古マンションの成約価格は平均5,067万円。
前年同月比で4.6%下落しました。
成約㎡単価も80万7,800円で、前年同月比3.9%下落。
さらに、成約件数は前年同月比3.4%減少しました。
その一方で、在庫件数は4万5,804件となり、前年同月比3.4%増加しています。
特に注目したいのが、
成約㎡単価が前年同月を下回ったのが73か月ぶり
という点です。
2026年5月は、
売れる件数が減る
成約価格が下がる
市場に残る在庫が増える
という変化が同時に数字へ表れました。
もちろん、この1か月だけを見て「首都圏マンション市場が完全に下落相場へ入った」と断定することはできません。
平均価格は、その月にどの地域、どの価格帯、どの広さのマンションが多く成約したかによっても変わるためです。
それでも、長期間上昇を続けてきた㎡単価が前年同月を下回り、成約件数が減少し、在庫が増えているという組み合わせは、相場を見るうえで無視できない変化です。
不動産価格は、ある日突然すべて下がるわけではない
不動産市場の変化は、株価のように一斉に数字へ表れるわけではありません。
一般的には、問い合わせが減り、内見が減り、売却までの期間が長くなり、その後、売れない物件から価格改定が始まります。
そのため、平均価格だけを見て、
「まだ価格は高いから問題ない」
と考えるのは少し危険です。
相場の変わり目では、市場全体の平均よりも、
自分が購入・売却を検討しているマンションの中で何が起きているか
を見ることが重要です。
なぜ買い手は慎重になっているのか
背景には、マンション価格そのものの高さがあります。
1億円を超えるマンションを住宅ローンで購入する場合、当然ながら毎月の返済額も大きくなります。
さらにタワーマンションでは、住宅ローン以外にも管理費、修繕積立金、駐車場代、固定資産税などが必要です。
「銀行から借りられる金額」と「無理なく返済できる金額」は同じではありません。
そして、もう一つ無視できないのが金利です。
金利が上昇すれば、同じ1億円のマンションでも毎月の返済負担は増えます。
物件価格が高く、さらに金利も上がれば、購入できる世帯は自然と限られてきます。
その結果、買主側も、
「本当にこの価格で買ってよいのか」
「もっと条件の良い住戸が出てこないか」
「将来売却するときに買い手がいるのか」
と、以前より慎重に比較するようになります。
それでも「タワマン暴落」とは言えない
ここまで読むと、
「やっぱりタワマンは危ないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、現時点では全面的な暴落と判断する状況ではありません。
2026年5月の数字は確かに下落しましたが、首都圏すべての地域、すべてのマンションが同じように下落したわけではないからです。
現在は、
高値を維持できる物件と、価格調整が必要になる物件が分かれ始めている
と見る方が自然です。
今後も選ばれやすいのは、駅に近い、眺望が良い、間取りが使いやすい、管理状態が良い、価格が適正、将来の需要が見込めるといった明確な強みのある物件です。
一方で、駅から遠い、同じマンション内の売出住戸が多い、周辺成約相場より割高、管理費や修繕積立金の負担が大きいといった物件は、以前より買主から厳しく比較される可能性があります。
つまり、
「タワーマンションだから値上がりする」のではなく、条件の良いタワーマンションが選ばれる時代になってきた
ということです。
これからタワマンを買う人が見るべきポイント
これから購入する方は、ポータルサイトの売出価格だけで判断しないことが大切です。
確認したいのは、実際の成約価格です。
直近でいくらで売れたのか。
売出開始からどのくらいの期間で成約したのか。
途中で何回価格変更されたのか。
同じマンション内で何戸売りに出ているのか。
さらに、管理費や修繕積立金、今後の大規模修繕計画まで確認する必要があります。
特にタワーマンションでは、同じ建物内でも階数、眺望、方角、間取りによって資産価値に差が出ます。
「マンション名だけ」で選ぶのではなく、
その住戸そのものを見ること
が重要です。
売却する人は「高く出すこと」と「高く売ること」を分けて考える
売却を考えている方にとっても、価格設定はこれまで以上に重要です。
相場が高いからといって、周辺の成約価格を大きく上回る価格で売り出すと、問い合わせが入らないまま時間だけが経過する可能性があります。
その間に競合住戸が増えれば、さらに売りにくくなります。
特にタワーマンションは、同じ建物の住戸が簡単に比較されます。
そのため、売却開始後は広告の閲覧数、問い合わせ数、内見数、内見後の反応を確認しながら、価格が市場に合っているかを判断する必要があります。
高く売りたいから高く出す。
これは必ずしも正解ではありません。
大切なのは、
最終的にいくらで売れるのか
という視点です。
城東エリアのタワーマンションにも共通する
こうした考え方は、品川、晴海、勝どき、有明、豊洲といった湾岸エリアだけの話ではありません。
墨田区、江東区、台東区など城東エリアのタワーマンションでも同じです。
重要なのは、「タワマン」という名前だけで一括りにしないこと。
築年数、総戸数、長期修繕計画、修繕積立金、管理組合の運営状況、防災設備、エレベーターや機械式駐車場の更新計画などによって、将来の維持管理コストや資産価値は大きく変わります。
購入価格だけではなく、
購入後にいくらかかるのか。
将来、誰に選ばれるのか。
売りたいときに売れるのか。
ここまで考えてマンションを選ぶ必要があります。
まとめ|終わったのは「タワマン」ではなく「何でも上がる神話」
湾岸タワーマンション市場で、現時点で全面的な価格崩壊が起きているわけではありません。
しかし、2026年5月には首都圏中古マンションの成約価格、㎡単価、成約件数が前年同月を下回る一方で、在庫件数が増加しました。
一部の新築タワーマンションでは価格調整も見られ、今後は転売住戸との競合も増える可能性があります。
これまでの、
「人気タワマンなら買えば上がる」
「湾岸なら何でも売れる」
という考え方は、少しずつ通用しにくくなっているのかもしれません。
これから重要になるのは、
どのマンションなのか。
その中のどの住戸なのか。
いくらで買うのか。
何年保有するのか。
そして次に誰が買うのか。
という個別の分析です。
タワマン神話が終わったのではありません。
「何でも上がる」という神話が終わり、本当に価値のある物件が選ばれる時代が始まった。
私は今の市場を、そのように見ています。
相場の変わり目ほど、刺激的なニュースや売出価格だけを見るのではなく、実際の成約価格、在庫、販売期間、管理状況といった数字を冷静に確認することが大切です。
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