築38年の実家、相続前に何を決める?都内の40代子育て世代のケーススタディ

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築38年の実家、相続前に何を決める?親が元気なうちに家族で準備

「実家は都内にあるし、何かあれば売れるだろう」。そう思う一方で、親には住み続けてほしいし、自分たちには住宅ローンと教育費がある。実家の将来を考える子育て世代にとって、価格だけでは決められない悩みです。

親が元気なうちに目指したいのは、売却の即決ではなく、暮らしの変化に対応できる準備です。ここでは、築38年の実家を持つ架空の一家を例に、何を調べ、どう判断するかを追ってみます。

この記事は、国土交通省・法務省・国税庁・墨田区の公開情報を参考に構成した架空のケーススタディです。家族・物件・金額は説明用の設定で、地域の平均値や査定結果を示すものではありません。

今回の家族|両親は実家、きょうだいはそれぞれ別の住まい

  • 実家:墨田区内を想定した、1988年築の木造2階建て。2026年時点で築約38年。土地約80㎡、建物約95㎡。土地・建物とも父の単独名義で、借入れは完済。
  • 両親:父75歳、母72歳。今は2人で暮らしており、住み慣れた地域に愛着がある。階段や家の手入れは少しずつ負担に感じている。
  • 子世代:43歳の長男は都内のマンションに住み、住宅ローン返済中。小学生の子どもが2人。40歳の妹も別の住まいで暮らし、2人とも当面実家へ戻る予定はない。
  • 相談のきっかけ:外壁の傷みが気になり、修繕する前に今後の住まいを話し合うことにした。大きな雨漏りの有無や耐震性は、まだ専門家に確認していない。

国土交通省の令和6年空き家所有者実態調査では、相続で空き家を取得した世帯の77.0%が、相続前に特に対策を講じていませんでした。これは全国調査であり、この家族像が都内で最も多いことを示す数字ではありませんが、空き家になる前に話し合う必要性を考える材料になります。出典:国土交通省「調査結果のポイント」[PDF]

1.最初に聞くのは「売っていい?」より、これからの暮らし

長男が最初に「相続したら売ろう」と切り出すと、両親は住まいを手放す話と受け取るかもしれません。そこで、この一家では「階段や掃除で困ることはある?」「将来もこの地域に住みたい?」という聞き方から始めます。

話してみると、両親の希望は「今は住み続けたい。ただ、家の手入れが難しくなったら近くの住まいへの転居も考えたい」というものでした。長男と妹は、通学や仕事の事情から、実家での同居を現時点では約束できません。

ここでの判断:今は両親の生活を続けながら、住み替えが必要になった場合の費用と選択肢を調べる。子どもが住む予定は「未定」と記録し、残す理由として決めつけないことにします。

2.築年数だけで判断せず、家と土地を調べる

築38年でも、修繕履歴や構造、道路との関係によって、住み続ける・貸す・売る際の条件は変わります。最初に、次の資料と現状をそろえます。

  • 権利と書類:土地・建物の登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、購入時の契約書、建築確認関係の書類、図面、修繕履歴。
  • 建物:屋根・外壁・床下・給排水の状態と、暮らしの安全性。建物状況調査と耐震診断は確認する内容が異なるため、目的に合う調査を相談する。
  • 土地:道路の種別・接道状況、境界、建替え時の制約。公的な地図や資料に加え、現地と行政窓口で確認する。

1988年築は新耐震基準の時期に建てられた住宅ですが、木造住宅の接合部や耐力壁配置などの仕様が明確化された2000年より前の建物です。「新耐震の時代だから調査不要」とは考えず、専門家に状態を確認してもらいます。墨田区では、2000年5月31日以前に着工された平屋・2階建ての木造住宅について、耐震診断等の助成制度を案内しています。この家も相談候補になりますが、適用は個別条件の確認が必要です。出典:墨田区の耐震診断・助成案内

ここでの判断:外壁を全面的に直す契約や解体を先に決めず、緊急性のある補修と将来の活用のための工事を分けて見積もります。助成を検討する場合は、契約・着工前に区へ確認します。関連:第4回|墨田区の空き家支援制度

3.親の資金と子世代の家計を分けて考える

実家を維持する費用は、両親の生活費や将来の住み替え・介護費用と一緒に確認します。父が所有する家を売った場合、売却代金は父の財産です。長男の住宅ローン返済や子どもの教育費に使えるお金として、先に数えないようにします。

子世代が援助できる金額や時間も、きょうだいで具体化します。「近くに住む長男が全部対応する」とせず、妹が書類の整理や見積もり比較を担当するなど、現地へ行く以外の役割も分けられます。

4.転居して空き家になったら、同じ期間で比較する

両親が将来転居した場合を想定して、「5年間残す」「5年間貸す」「売る」を比べてみます。以下は計算方法を示すための仮定であり、この物件の家賃相場や工事見積もりではありません。

転居後5年間の比較例(借入れなし・単位:万円)
選択肢仮定と計算読み取り方
空き家として残す税金・保険・管理等30/年 × 5年 + 期間中の修繕100 = 支出250利用予定と、250万円を負担して残す意味を確認する。
貸す家賃15/月 × 稼働10か月 − 経常支出50/年 = 年間収支100。
100 × 5年 − 貸出前の修繕300 = 収支+200
所得税等を引く前の単純収支。空室2か月分を織り込み、経常支出には税金・保険・管理・通常修繕を含む。追加の大規模修繕は別途。
売る成約価格 − 売却諸費用 − 譲渡所得にかかる税金で手取りを確認仲介査定と買取提示を取得し、費用・時期・引渡し条件を比べる。この例では価格を仮定せず、個別調査で埋める。

「貸せば5年間で200万円残る」だけで、売却より有利とは決められません。売却との比較には、5年後に残る土地・建物の価値、最終的に売る際の費用・税金、修繕の追加負担も必要です。家賃を得るまでに300万円を先に支払えるかも確認します。

例えば、空室が毎年4か月なら、他の仮定が同じでも5年間の収支は50万円まで減ります〔(15万円×8か月−50万円)×5年−300万円〕。修繕費が増えれば、さらに変わります。1つの試算だけで決めず、条件が悪くなった場合も並べましょう。

貸し出す場合は、将来家族が使いたくなったときに自由に明け渡してもらえるとは限りません。普通借家・定期借家など契約方法によって扱いが異なるため、将来の利用予定も含めて不動産会社へ相談します。
関連:第2回|実家を売る・貸すの判断基準

親の実家は売る?貸す?判断前に確認したい5つの比較ポイント|YouTubeで見る

5.相続前だからこそ確認したい、税金と名義のこと

この1988年築の家は「相続空き家の3,000万円控除」を前提にしない

国税庁が示す被相続人の居住用財産の特例には、1981年5月31日以前に建築された家屋であることなどの要件があります。今回の1988年築という設定は、この築年要件を満たしません。「古い実家だから使える」と見込んで資金計画を組まないことが大切です。出典:国税庁 No.3306

親が生前に自宅を売る場合と、相続後に子どもが売る場合では、検討する特例や条件が異なります。親の住まいと生活資金を優先しつつ、具体的な売却時期を決める前に税理士へ確認しましょう。購入時の契約書などを探しておくことも準備の一つです。

親が健在の今と、相続が起きた後の手続きを分ける

父が所有・居住している現在、将来相続する可能性があるという理由だけで、この家の相続登記をする段階ではありません。まず父の意向を確認し、遺言の有無や書類の所在、将来の分け方について、必要に応じて司法書士・弁護士などへ相談します。

この家族設定では母も存命です。父の相続を「長男と妹だけで決める」と考えず、実際の相続人や遺言、他の財産も含めて確認します。親名義の財産の処分は、子ども同士の合意だけで進められるものではありません。

相続で不動産の所有権を取得したことを知った場合、相続登記は原則3年以内です。すでに過去の相続が発生していたことが名義確認で分かった場合は、別途期限を確認してください。出典:法務省の相続登記Q&A関連:第3回|相続したら最初にすること

この一家の結論|今は住み続け、半年後にもう一度話す

今回の設定では、両親の希望を尊重し、必要な安全確認と補修を進めながら住み続ける方針にします。同時に、長男と妹は、転居後の売却・賃貸に備えるための情報をそろえます。

  • まず1か月以内:親の希望、名義、維持費、書類の保管場所を確認。長男は現地確認、妹は資料整理を担当する。
  • 3か月を目安に:両親の了承のもと、建物の調査と修繕見積もり、売却査定、賃貸の募集条件・収支を集める。必要に応じて税務・相続を相談する。
  • 半年後:両親の暮らしの負担、修繕費、家族の予定を再確認。転居が必要になった場合は、住み替え先と資金の見通しを含めて方針を決め直す。

転居後も家族が使う予定がなく、貸すための工事費や管理負担が大きければ、売却を優先して検討する理由になります。一方、具体的な利用予定ができ、維持費を無理なく負担できるなら、残す判断もあり得ます。

売却を検討する段階では、仲介の価格見通しと買取の具体的な条件を並べます。関連:第5回|仲介と買取、どちらで売る?

わが家の実家なら、どこから調べる?

「まだ親と十分に話せていない」「価格を知らない」という段階でも、まずは状況の整理から始められます。全体を先に確認したい方は、「親の実家、どうする?」全5回ガイドをご覧ください。

ChapteRでは、墨田区を中心に、実家の売却・賃貸・保有について比較のご相談を承っています。お問い合わせには、所在地、おおよその築年数、現在の居住状況、家族で迷っていることを分かる範囲でお書きください。

実家の今後を相談する

制度の記載は2026年9月20日時点の確認情報です。個別の税額・特例・登記・助成の適用は、それぞれの専門家や自治体へご確認ください。

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